アルコール依存症の治療について!離脱症状を緩和する方法はあるの?

アルコール依存症の治療や離脱症状長い時間がかかり、自一人の力で治すのが非常に難しい病気です。また、患っていた期間が長いほど治りにくいです。アルコール依存症の治療は実際にどんな治療を行うのか、また、非常に辛いといわれる離脱症状を緩和させる方をご説明します。

アルコール依存症の治療について!離脱症状を緩和する方法はあるの?

目次

  1. アルコール依存症とは?
  2. アルコールがアルコール症を呼ぶ
  3. アルコール依存症の診断基準
  4. アルコール依存症が与える脳への影響
  5. アルコール症を治療せずに放置するとどうなるか?
  6. アルコール依存症の治療
  7. アルコール依存症治療のステップ
  8. アルコール依存症の離脱症状とは?
  9. 辛い離脱症状を緩和する方法はあるのか?
  10. アルコール症によって障害された身体の治療
  11. 離脱症状の不安定な心の治療法とは
  12. 抗酒剤を使った治療法
  13. アルコール症・離脱症状・断酒のために必要なこと
  14. アルコール依存症治療の根幹
  15. アルコール依存症の治療!離脱症状を緩和する方法は?のまとめ

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、お酒の飲む量、タイミングなどを自分でコントロールできなくなった状態です。アルコールは依存性薬物の一種。アルコールを摂取することによって様々な問題が起きているのにも関わらず、アルコールを飲むことを止められなくなってしまいます。

アルコールは脂肪となじみやすく、その効果は麻酔剤と同等です。脳細胞の組織がほぼ脂肪でできていることを考えると、毎日の飲酒がどれほどの影響を脳に与えるか想像できると思います。

アルコールに耐性ができる?

飲酒を始めたころは少量のお酒で酔えて気分よくなれたのに、だんだんその量では酔えなくなり、酒量も増えてきます。さらに、次の日の仕事の事や家族へ迷惑をかけているという認識がなくなり、飲酒量がいつもより増えたり、昼間から飲んだりし始めます。また、飲む場所も気ならなくなり、所かまわず飲酒します。

飲酒を続けるとどうなる?

少しでも酒を口にすると自分を抑制できなくなり、どんどん飲んでしまいます。周囲に何を言われようとも、毎日数時間おきに飲酒するようになります。「仕事をクビにするぞ!」「離婚する」「命の危険がある」などの言葉にも全く動じなくなります。

そのままさらに酒を飲み続けると、起きたらすぐに飲み始め、酔ったら眠り、また目が覚めるとまた飲み始めるという「連続飲酒」が始まります。

適切な飲酒量とは?

適切な飲酒量は、男性の場合ビールなら500ml、日本酒は1合弱、焼酎では180mlなどとなっています。女性の場合はこの半分の量となります。一日の飲酒量がこの3倍以上になれば「多量飲酒」とされます。

アルコールがアルコール症を呼ぶ

アルコール依存症になると、飲酒することで一時的高揚した気分を維持しようとして飲酒します。酔いが醒めることで抑うつ状態に戻ると、不安感が襲ってきて飲酒を繰り返してしまうのです。また、長期飲酒によってうつ状態となり、気分を上げるために飲酒するということもあります。

アルコール依存症の人の心

アルコール依存症の人は、飲酒による問題が起きても、周囲の説得に耳を貸そうとしません。「自分にはお酒に関する問題などない」と考えようとします。自分に都合が悪いことからは目を背けようとし、楽しく酒を飲んでいる自分を咎める人に反発して飲酒による悪影響を否認します。

しかしながら、実は飲酒の問題にうすうす気づいていて、「なんとかしなければ」という気持ちはあるのです。それなのに気が付いたらまた飲んでいる自分がいる。自己嫌悪に陥ってさらに飲酒する、という悪循環にはまっていきます。

アルコール依存症の診断基準

アルコール依存症の診断基準は以下のようになっています。

過去の1年間のある期間に、下記の6項目のうち3つ以上が同時に起こっているときにのみ、アルコール依存症と診断する。(国際疾病分類の第10版の診断基準をもとに一部改変)  (1) アルコールを飲みたいという強い欲求がある。また、飲んではいけないと思いながらつい飲んでしまう。  (2) 飲酒の時間や量をコントロールすることができない。  (3) 飲むのを止めたり量を減らしたりすると、離脱症状が出る。  (4) 酔うために必要なアルコールの量が増えてきている。  (5) 飲酒に関することに多大の時間、お金、労力を使い、それ以外のことをおろそかにする。  (6) 飲酒によって問題が起きているのが明らかであるにもかかわらず、飲み続けている。

アルコール依存症が与える脳への影響

誰しも二日酔いの経験はあるでしょう。二日酔いで頭が痛くなるのは、アルコールの浸透圧によって脳細胞内の水分が60%も失われ、脳が縮んでしまうことにより起こります。水分補給すれば元に戻りますが、大酒を繰り返している人はお酒を飲まない人に比べて、脳萎縮を起こす確率が明らかに高くなります。

アルコールによる前頭葉障害

アルコール依存症の患者さんには、意思が弱くて根気がなく、モラルに乏しくて判断力が欠けているような人格になってしまっている方が多くいます。これは、アルコールによって、意思や判断を司る前頭葉が障害されるためと考えられています。また、自分が病気であることや、欠点などを認めようとしません。これが、お酒をやめることを難しくしてしまっているのです。

アルコールによる健忘症

アルコールを大量に飲み続けていると、ビタミンB1類が大量に消費されます。ビタミンB1は神経の栄養剤であり、これが欠乏すると脳幹の乳頭体と呼ばれる部分が障害を受けて、健忘症候群を引き起こすのです。この症状が現れた場合は、大量のビタミンB1が含まれる点滴をすることで治療します。障害が進んで、ウェルニッケ型脳炎をおこしているような場合は、この治療を行っても記憶障害は元に戻りません。

アルコール症を治療せずに放置するとどうなるか?

脳がアルコールに慢性的に障害されると、まずは嫉妬を代表とする妄想が現れ、脳の障害が進むと最終的にはアルコール性認知症へと進行していきます。

アルコール・パラノイア

アルコール依存症による妄想の内容は、なぜか嫉妬妄想が多いと言われています。なぜなのかははっきり分かっていないそうですが、アルコールによる男性機能の低下が要因の一つともいわれます。この妄想は、別名「酒客(しゅきゃく)嫉妬妄想」といいます。例えば、何の根拠もないのに妻が浮気をしているに違いないと思い込み、妻を責め立てたり、仕事にも行かず、浮気相手から連絡が来るのではと、ずっと家で電話番をしたりという行動を起こします。

アルコール性認知症

アルコール依存症になると、アルコールによって脳細胞の脱水や脂肪分の溶解が起こって、物忘れがひどく、時間や空間への認識(見当識)がなくなってきます。これに作り話の要素が加わった状態を「コルサコフ状態」といいます。例えば、いつも行っているはずのトイレの場所が分からなくなる、済ませたばかりの食事を催促するなどの行動が見られます。これは数か月経っても改善しないことが多く、そのまま回復しない場合もあります。

アルコール依存症の治療

アルコール依存症からの回復は、断酒が大前提となります。断酒とは、ただ単に酒をやめることではなく、一生涯お酒を口にしないということです。まずは断酒に取り組み、離脱症状への対処、アルコールで障害された身体の治療を行います。

アルコール依存症によって損なわれた身体の健康がある程度回復したら、段階的に心の治療も行っていきます。心理社会的治療といわれ、酒害教育、個人精神治療、集団精神治療などがあります。アルコール依存症からの回復には数年かかると言われています。断酒期間が約3年続けば、それ以降も安定した生活を送る方が多いです。

基本は入院治療

病院を選ぶときは、アルコール依存症の治療について専門的な知識を持つ医師がいる病院が理想的です。基本は病院に入院して治療します。しかし、患者さんが比較的安定していて、家族の助けが得られるような場合は外来で通院治療も可能です。

アルコール依存症治療のステップ

アルコール依存症は治療を始めてすぐに回復する病気ではありません。段階的に、焦らず根気よく治療することが大切です。

病気を認識させる

まずは、今の患者さんの状態が「病気である」ことを認識してもらうことから始めます。また、アルコール依存症がどのような病気であるかを理解してもらいます。そのうえで、家族や病院医師など、周囲からの働きかけにより、患者さんに「なんとしても断酒するぞ!」という意欲を持ってもらいます。断酒のための動機付けができれば、断酒に取り組みやすくなります。

断酒開始

実際に断酒を開始します。同時に、離脱症状に対する治療、アルコールによる合併症の治療も行っていきます。期間の目安は3週間程度です。離脱症状については後で詳しくご説明します。

リハビリテーション期

心身の健康がある程度回復したら、リハビリテーションを行っていきます。断酒を継続するとともに、飲酒に対する考え方や行動を見直すための精神療法、退院後の日常生活を行うための就業訓練などです。

退院後

退院後は、断酒継続はもちろんのこと、定期的に病院へ通ったり、自助グループに参加したりすることになります。再発防止のために、半年から1年ほど病院で処方された薬を飲む場合もあります。また、ストレスを感じたときの対処法を獲得することや、家族の回復も重要です。

アルコール依存症の離脱症状とは?

離脱症状とは、薬物やアルコールなど、精神作用を持つ物質を長期間使用していた場合、その使用をやめることによって現れるさまざまな病的症状のことです。アルコール依存症の治療には、断酒が不可欠ですから、この離脱症状は必ず乗り越えなければならない試練となります。

アルコール依存症の離脱症状には、飲酒をやめてから数時間~2日以内に起こる『早期離脱症状(小離脱)』と、飲酒をやめてから2~3日目に現れる『後期離脱症状』があります。離脱症状は1週間程度で改善することがほとんどです。

早期離脱症状

飲酒をやめてから数時間~2日以内に現れ、1~2日目に症状のピークを迎え数日で回復します。主な症状は、焦燥感、手のひらの震え(振戦)、自律神経症状(動悸、発汗、発熱、血圧上昇など)、軽い意識障害、吐き気や嘔吐などです。

後期離脱症状

飲酒をやめてから2~3日目に現れる症状です。主な症状は、手の震え、自律神経症状(動悸、発汗、発熱、血圧上昇など)、興奮、見当識障害(自分の居場所が分からなくなる)、意識変容(表面的な会話はできるが、幻視などの症状が出る)などです。

アルコール依存症の後期離脱症状で現れる幻視は、現実感があるのが特徴です。例えば、天井や壁に小動物や虫などがうごめいていて、自分の体に這い上がってくる、幽霊がいるなどと訴えるようになります。また、職業性せん妄というのもあって、これは慣れた職業上のしぐさが、仕事と関係ない場面で見られることです。例えば、パソコンを実際に使っていないのに、パソコンで作業しているしぐさをするなどです。

辛い離脱症状を緩和する方法はあるのか?

アルコール依存症の離脱症状は、アルコールをやめて体が正常に戻ろうとして起きる反応なので、異常でも悪いことでもありません。そうはいっても、その症状の辛さから、再び飲酒してしまう人も少なくありません。

離脱症状は体の正常な反応

この離脱症状は、タイミングよく薬物治療による離脱コントロールが行われた場合、かなり症状を軽くすることが可能です。そのためには、アルコール依存症治療を専門的に行っているような病院を選び、早急に治療を始める必要があるでしょう。

症状を軽くするには抗不安薬が有効

早期にジアゼパム(ベンゾジアゼピン系の薬物)などを投与する事で、離脱症状を予防したり、苦痛を軽減することもできます。この薬は抗不安薬として使われるもので、離脱により起こる不安やイライラをなくしてくれます。

アルコール症によって障害された身体の治療

断酒と同時期くらいから、アルコールによって障害された身体の治療を行っていきます。症状が手遅れでなければ、およそ3~4ヶ月で回復する場合が多いです。

アルコールをやめると治る症状

記憶障害、幻聴、妄想、錯乱、アルコール依存症意識障害などは、アルコールが身体から抜けて離脱症状が治まる頃にはほとんど消失します。ただし、脳が高度に障害されているような場合は症状が改善されない場合もあります。

アルコール依存症に合併しやすい内臓疾患

アルコールを分解する働きをする肝臓や、直接アルコールが入ってくる胃などが障害を受けやすいです。肝臓なら脂肪肝、肝炎、肝硬変など。胃なら胃潰瘍などです。そのほか膵炎、腹水、心筋症、さらに病状が進行すると食道がん、肝臓がん、大腸がんなどを併発している場合があります。

離脱症状の不安定な心の治療法とは

身体が治っても、アルコールに対する考え方や、自分の心が以前のままだと、再飲酒してしまう可能性が高いので、しっかりと考え方を正す必要があります。

ネガティブな感情を持たない

孤独感、劣等感、他人に対する怒りや恨み、依存心などは、断酒後の生活を苦しくし、再飲酒する原因にもなります。このような感情を自分で消すことは難しいので、専門の病院で精神療法などの治療を受けたり、自助グループへの参加を通して徐々になくしていきます。

心の治療は時間がかかる

心の治療は、治療を始めてすぐに治るものではありません。イライラしてじっとしていられない、怒りっぽくなる、気分がふさぎこむなどの症状が落ち着くなでには、早くても1~2年ほどかかります。

抗酒剤を使った治療法

アルコール依存症の治療の際に、どうしても飲酒の衝動を抑えられないような場合は、断酒の補助として抗酒剤という薬を使う場合があります。よく使われる薬はシアナマイド(シアナミド)、ノックビン(ジスルフィテム)の二つです。抗酒剤の反応の強さは、服用した抗酒剤の量と飲酒量によって決まります。この反応は長くても数時間のうちには消失します。

シアナマイドを使った治療法

シアナマイドの由来は、肥料として使われる石灰窒素に含まれている『カルシウム・シアナミド』という物質です。肥料工場の職員が酒に弱くなることから、この物質が抗酒剤の原料として使われるようになりました。この抗酒剤を服用した後に少しでも飲酒すると、直後に顔面紅潮、血圧低下、心悸亢進、呼吸困難、頭痛、悪心、嘔吐、めまいなどを起こし、ひどいときには立つこともできなくなります。これをシアナミド・アルコール反応と言います。

シアナミアドは、体内にアルコールが入っていない状態で服用し、1回の服用で、すぐに効果が現れます。ただし、効果が続くのはその日だけです。この抗酒剤は、入院中の患者さんが外出する際に使うなど、即効性が求められるようなときに使用されます。

ノックビンを使った治療法

ノックビンは、タイヤ工場で用いられていた薬品です。シアナマイドと同じように、この抗酒剤を服用しているときに飲酒すると、呼吸困難、心悸亢進、顔面紅潮、悪心嘔吐、血圧低下、めまい、脱力、視力障害などを起こします。これらの反応が起こるのは、シアナマイドよりやや遅く、飲酒後5〜15分後に起こります。

ノックビンは、十分な反応を起こすためには、少なくとも1週間は服薬を続ける必要がります。しかし、その後効果は約1週間持続します。また、反応の強さは、シアナマイドよりも強くなりますので、強い反応を起こしたい場合はノックビンが使われます。

抗酒剤は万能ではない

抗酒剤を服用しさえすればアルコール依存症が治るというわけではない、ということを理解しておきましょう。患者さん本人の治療に対する強い意志、離脱症状の治療、合併症の治療、断酒のための教育、人間関係の改善など、多くのことが必要になってきます。

アルコール症・離脱症状・断酒のために必要なこと

断酒を継続することは、想像よりも大変なことです。時には家族や仲間のの力を借りることも大切です。断酒を続けるためにはいくつか気をつけるポイントがあります。

一人で頑張らない

アルコールを自分ひとりの力でやめるのは至難の業です。断酒会やアルコール依存症患者を支援する団体などに参加し、仲間と一緒に断酒をする方が気持ちが楽になり、また断酒率もいいという結果が出ています。

『飲む』につながるものを絶つ

昔よく飲んでいた場所へ行くと、「飲みたい」という欲求を抑えるのは難しくなります。自分が治ったかどうか確かめるために、あえて飲み屋街などに出かける人もいますが、やめておいた方がいいでしょう。また、飲み友達の誘いに乗って飲みにいってしまうこともある得るので、飲み友達とは思い切って縁を切るのがよいでしょう。

空腹状態を避ける

空腹は飲酒欲求を高めます。食事時間を規則的にして、空腹状態をなるべく作らないようにします。また、「酒が飲みたい」と感じたら、その都度何か食べるようにすると、飲酒欲求を軽減させることができます。

疲れすぎない

仕事で疲れた後の一杯は美味しく感じるものです。つまり、「疲れ」が飲酒欲求につながります。普段から意識して疲れを溜めないようにしましょう。また、ストレスも飲酒欲求を高める原因となります。

アルコール依存症治療の根幹

アルコール依存症を治療するに当たって、その根幹となるのは心理社会的治療です。つまり、お酒を飲まない習慣を身につけること、良好な人間関係を構築、維持していくこと、社会生活のストレスに打ち勝つことを目指します。

酒害教育

飲酒が引き起こす諸問題や、アルコール依存症という病気について理解することを目的とします。

個人精神療法

個別に行われるアルコール依存に関するカウンセリングです。精神科医や臨床心理士などと話し合い、個別のアドバイスをもらいます。

集団精神療法

心理社会的治療の中心となる治療法です。医師の指導のもと、数名の患者さんがグループになって、さまざまな問題について話し合い、断酒やアルコール依存からの回復について考えます。

自助グループへの参加

断酒会などの例会やミーティングに参加し、自分の体験談を話したり、他の人の体験談を聞いたりします。自分を見つめなおす機会になるだけでなく、同じ病気の仲間ができることで断酒継続の支えとなります。

アルコール依存症の治療!離脱症状を緩和する方法は?のまとめ

アルコール依存症は、ただ単に「酒を飲みすぎたからなる」という病気ではなく、心理的な問題や、周囲の環境などが複雑に絡み合ってなる病気です。そのため、治るまでに長い時間がかかりますし、一人で克服するのがかなり難しい病気です。また、症状が長くなればなるほど、治るまでに時間がかかってしまいます。少しでも「おかしいな」と感じたら、すぐに専門の病院へ相談しましょう。

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